ラテン語入門(小中学生向け)

このコーナーではラテン語に関する極めて初歩的な解説を試みています。 毎年行われるProferamus jubiloに関連したラテン語を取り上げる予定ですので、どうぞご参考までにご覧ください。

 

 

 

 

大阪(osAka)と

新大阪(shinOsaka)で考える

ラテン語入門
(小中学生向け)

 

 

 大阪(o-sA-ka)と新大阪(shin-O-sa-ka)を用いて、ラテン語のアクセントの位置の基本を考えてみましょう。 そして、ラテン語が音楽とどう関係しているか、もっとも簡単な例を挙げてみたいと思います。 なお、上記の大文字はアクセントのある母音を示し、ハイフンは音節の区切りを示しています。

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 以前、新幹線に乗った時、英語のアナウンスではオーサカはサに、シンオーサカはオーにアクセントが置かれていました。 これはラテン語風に解釈すると、大阪(o-sA-ka)は後ろから2番目のAが長母音なので、アクセントがそこに置かれ、一方、新大阪(shin-O-sa-ka)は後ろから2番目のaが短母音だからもう一つ前へ行ったと考えることができます。    
 つまり、ラテン語ではアクセントを後ろからある距離のところに置きたいのです。 具体的には、後ろから2番目の母音が長母音であればアクセントはそこに置かれ、もし、短母音であれば、一般にはもう一つ前に行きます。 そして、それ以上前に行くことはありません。 
この短母音か長母音かは単語ごとに決まっています。 (ラテン語の詩において、長音節と短音節とが特定の規則に従って、並ぶ様にできていますから、短母音、長母音の区別は重要なものです。)

冒頭で、音節に分けてみましたが、一音節には短母音か長母音か、いずれか一つが含まれます。 ラテン語の歌では基本的には一音節に一音が対応している事が多いです。 

 さて、この様なアクセントの位置の規則により次の事が分かります。

 

2音節の(2つの母音を含む)語はいつも頭にアクセントがある。 (例 gloria, deus等)
3音節の場合は、頭にアクセントがある場合と、無い場合がある。 
4音節以上の場合はいつも頭にアクセントがない。 (例 refugium, miserere等)

 

補足;後ろから2番目の母音が短母音であっても、次の母音との間に子音が2つ以上あると、うしろからの距離は十分となり、後ろから2番目の音節にアクセントが置かれます。)

 

 上図の一段目の楽譜はSymphonieと書かれ、器楽パートであることを示しています。 実際は4声で書かれているのですが、これはその一番上の声部です。 4小節目に注目してください。 この小節は二分音符の後に四分音符が二つ続きます。 小節単位に楽譜を見ている方は、この合計3個の音符をひとまとめに考えるかもしれません。 それも一つのアイディアです。
二段目の楽譜はChoeurと書かれ、合唱により歌われる事を示しています。 実際は、合唱は5声で書かれていますが、これはその一番上の声部です。 4小節目をご覧ください。 この小節も二分音符の後に四分音符が二つ続きます。 ところが、この小節の二分音符と次の四分音符に対しnos-terと書かれています。 そして、二つ目の四分音符にはRe-で始まる次の語が対応しています。
その語はrefugium(避難所)と言う語です。 この語は4音節の語ですが、後ろから2番目の母音が短母音ですので、もう一つ前のfuにアクセントがあります。 このためアクセントの位置を小節の頭に合わせ、Reが前へ出てしまったのです。
 
この様に、多くのラテン語を知る事は、器楽曲においても、フレーズやフレーズ内の単語の可能性を知る事でもあります。 なお、ラテン語の子孫にあたる言語(ポルトガル語、スペイン語、フランス語、イタリア語等)においてはアクセントの位置はもう少し簡略化されていますが、アクセントの位置は後ろからの距離で決まる点はラテン語と同じです。 イタリアやフランスの器楽曲においても、小節の一つ前の音からフレーズが始まる事が多いのは、一つは言葉に起因するものだと思われます。